実践知識・認証と権限
パスキーは、 なぜ破られにくいのか。
鍵のしくみを絵でつかみ、 2026年に報じられた攻撃の狙いと守り方を見分ける。
2026年9月30日時点 ・ 前半の解説はwhatarepasskeys.infoの要約
1 / 15パスワードは、守る手間のわりに破られやすい。
パスキーは「鍵は手元、錠前はサイト」。
サイトから錠前が漏れても、鍵は作れず、サインインに使えない。
登録で錠前を渡し、毎回の問いに署名して返す。
-
登録で鍵を作る
鍵のペアを作り、公開鍵(錠前)を登録する。
-
端末で確かめる
顔・指紋・PINで本人か確かめる。
-
毎回、署名して返す
サイトの問い(チャレンジ)に、秘密鍵で署名して返す。
顔・指紋・PINは端末の中で確かめる。秘密鍵はサイトへ送らない。
問いを使い捨てにするサイトなら、同じ応答の再送は受け付けられない
3つの攻撃すべてに強いのは、パスキーだけ。
この図をテキストで読む
比較表「方式ごとの強さ」。3列 × 3行。 【列】 1. パスワード 2. パスワード+SMS 3. パスキー〔強い〕 【比較】(観点ごとに) ■ 偽サイト - パスワード: 非対応 - パスワード+SMS: 非対応 - パスキー: 対応 ■ 漏えい - パスワード: 非対応 / 保存データから割り出される - パスワード+SMS: 非対応 / パスワードは同じく割り出される - パスキー: 対応 / 漏れるのは公開鍵だけ ■ 再送(リプレイ) - パスワード: 非対応 - パスワード+SMS: 一部対応 - パスキー: 対応 / 問いを使い捨てにするサイトで
しかも操作は、顔・指紋・PINで確かめるだけ。
whatarepasskeys.infoの比較。メールのリンク方式は全行△
偽サイトには、パスキーが応答しない。
中継型フィッシング:偽サイトが入力やコードをその場で本物へ送る手口
登録したドメインと一致するので、応答する
ドメインが違うので、応答しない
SMSのコードは、中継型フィッシングでその場で使われる。
別の経路:偽の画面で同期用のPINを盗む手口(VaultJacking)
同期パスキーは戻せる。デバイス固定は外へ出ない。
パスワードマネージャーが暗号化して配る。なくしても戻せる。
端末やセキュリティキーの中だけ。クラウド側の侵害に強いが、なくすと使えない。
同期は2026年、VaultJackingとPass-ta-keyの標的になった。
職場では、会社がデバイス固定を指定することがある
対応するサイトなら、設定から作って使える。
-
作成を選ぶ
サイトやアプリの設定で、パスキーの作成を選ぶ。
-
端末で確かめる
顔・指紋・PINで確かめると、保存される。
-
次から選んで確かめる
サインイン画面で選び、端末で確かめる。
作った後もパスワードが残ることがある。残ったパスワードは偽サイトで盗まれうる。
QRコードを読み取り、別の端末のパスキーで確かめることもできる
2026年の報告
2026年、「パスキーが破られた」?
5〜9月に、「パスキー突破」の報道が4件続いた。 破られたのは暗号か、その周りか。
4件とも、パスキーの暗号は破っていない。
研究3件と、パスキーを口実にした攻撃の報告1件。公表日順
-
5月20日
VaultJacking
偽の画面で同期用のPINを入力させる(PhishU)
-
8月3日
Pass-ta-key
端末のマルウェアが同期パスキーを悪用(Unit 42)
-
8月5日
Pass-the-Passkey
ログに残った応答を再送する(SpecterOps)
-
9月9日
パスキーを口実にした攻撃
ヘルプデスクを装い、サインインを奪う(Microsoft)
名前が似たPass-ta-keyとPass-the-Passkeyは別の研究
端末に入り込むか、記録を再送するか。
マルウェアが、メモリに出た32バイトの同期の暗号鍵を抜いた。同期したパスキーをすべて復号できた。
どの手口も、端末でマルウェアが動いていることが前提
署名した応答が、誰でも読めるログに残った。それを再送すると、Entra IDが受け付けた。
ログに残す不具合は、公表前の7月に修正(CVE-2026-34348)
Pass-ta-keyは開示後、GoogleやeBayなどが修正した
設定や同期を口実に、PINやサインインを差し出させる。
PhishU(5月20日)とMicrosoft(9月9日)の報告
偽の入力欄で同期用のPIN(画面ロックとは別)を盗む。攻撃者の端末を同期に加え、パスワードとパスキーをまとめて開く。
ヘルプデスクを装って誘い、中継型フィッシングや、コードを入力させる認証(デバイスコード認証)で奪う。
錠前は無事。狙われたのは、その周り。
暗号と照合は破られていない。ただし2件では、同期から鍵が持ち出された。
立場ごとに、周りを固める。
各発表元の推奨をまとめた
- OSとブラウザを更新する
- 同期用のPINや再設定を求める連絡を疑う
- 正規の窓口に確かめる
- 重要なアカウントはデバイス固定のパスキーにする
- デバイスコード認証を絞る
- 端末の追加を監視する
- ヘルプデスクでの再設定は身元確認を厳しくする
- 応答が本人確認済みかを確かめる
- 使い捨ての問いで、同じ応答の再送を拒む
おわりに
偽サイトには、今もパスキーがいちばん強い。
2026年の攻撃は、パスワードやSMSに戻る理由にならない。
2026年の研究と報告
-
VaultJacking(PhishU)
5月20日
-
Pass-ta-key(Unit 42)
8月3日
-
Pass-the-Passkey(SpecterOps)
8月5日
-
パスキーを口実にした攻撃(Microsoft)
9月9日
解説・報道
-
パスキーとは?
whatarepasskeys.info
-
CVE-2026-34348の報道
thehackernews.com・8月
修正の状況は発表元で確認(2026年9月30日時点)